あの夜のことは、たぶんずっと忘れられない。
長男は小学3年生。「子どもはわかっていない」と思いたかったけど、やっぱりわかっていた。
夕飯を食べながら、突然「パパ、いつ帰ってくるの?」と聞いてきた。
妹と弟はまだ食べていた。
「パパはね、今ちょっと別のところにいるんだよ」
「なんで?」
「……大人のことだから、もう少ししたらお話しするね」
長男はしばらく黙って、それからご飯を食べ続けた。
何も言わなかったけど、全部わかってたと思う。子どもって、ちゃんとわかってる。
その夜、子どもたちが寝てから一人で泣いた。長男に正直に話せなかった自分と、正直に話せない状況と、どちらに泣いているのかわからなかった。
「大人のことだから」って、ずるい言葉だと思う。でも他に言葉が見つからなかった。